うつ消しノウハウ:ポジティブな内なる声と対話することとは
Chatter 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法

私たちはネガティブな内なる声=「チャッター」に反応しがちですが、これに支配されると人生に悪影響を及ぼします。私たちが耳を傾けなければならないのは、やかましいチャッターではなく、自分を成長させようとするポジティブな内なる声なのです。自分自身との会話を正しいものに変えることで、私たちはよりよい人生を送れるのです。
イーサン・クロス
意識する心のコントロールに関する世界的な第一人者。ミシガン大学の心理学部と同大学ロス・スクール・オブ・ビジネスの受賞歴のある教授であり、感情と自制研究所の所長。ホワイトハウスの政策議論にも参加し、『CBSイブニングニュース』や『グッド・モーニング・アメリカ』、NPR『モーニング・エディション』などの番組で、研究に関するインタビューを受けている。その先駆的な研究は『ニューヨーク・タイムズ』『ニューヨーカー』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『USAトゥデイ』『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』などで取り上げられている。ペンシルヴェニア大学で修士号を、コロンビア大学で博士号を取得。本書が初の著書。
chatter とはランダムハウス英和大辞典によれば、
・早口でしゃべる、・ぺらぺらしゃべる、・まくしたてる
となっている。
要するに、自分の感情、妄想、恐怖、怒り、悲しみ等を、
どうやって制御して前向きな思考をするかを論じている。
著書の最後に、chatter 雑念をコントロールして、ポジティブに思考する
26の方法としてまとめている:
1)距離を置いた自己対話を活用しよう
2)友人に助言していると想像しよう
3)視野を広げよう
4)経験を試練として捉え直そう
5)チャットによる身体反応を解釈し直そう
6)経験を一般化しよう
7)心のタイムトラベルをしよう
8)視点を変えよう
9)思ったままを書いてみよう
日記をつけようということ。
10)中立的第三者の視点を取り入れよう
11)御守を握りしめる、或いは迷信を信じよう
12)儀式を行う
>> 擬似的な儀式でもかまわない。
スポーツマンのプレー前のルーティンも一種の儀式。
13)感情認知面のニーズに応えよう
14)目に見えない形で支援しよう
15)子供にはスーパーヒーローになりきってみようと言おう
16)愛をこめて敬意も忘れずに触れよう
17)他の誰かのプラセボになろう
18)顧問団をつくろう
19)体のふれあいを自分から求めよう
20)愛する人の写真を眺めよう
21)儀式を誰かと一緒に行う
22)ソーシャルメディアの自動的使用を最小限にしよう
23)ソーシャルメディアを利用して支援を得よう
24)環境に秩序を作り出そう
整理整頓
物理的環境に秩序を与えることで、脳内の内面的秩序を獲得する。
25)緑地をもっと活用しよう
自然環境に触れることで、【注意力の備蓄】が可能。
公園や自然の中を散歩するのが効果的だが、
自然の写真・ビデオ・川のせせらぎ等の音に触れるだけでも効果あり。
26)畏怖を誘う経験を求めよう
大自然、偉大な芸術家の作品
畏怖の効力は自分を小さく感じさせ、悩み・悲しみも小さくしてくれる。
自分自身との会話を見直そう!
意識する心のコントロールに関する世界的な第一人者のイーサン・クロスは、自分の中の内なる声とうまく付き合うことで、よりよい人生を送れるようになると言います。人は素晴らしい体験をしたときには、よい考えを持てますが、嫌な体験をした時には、ネガティブな内なる声=「チャッター」に支配されてしまいます。
頭の中の内なる声であるチャッターは過去と未来の時間軸で、私たちに不安を与えます。
・過去の出来事の強迫的な蒸し返し(反芻)
・未来の出来事の不安な想像である(心配)
チャッターに時間を奪われると集中力を失い、仕事や勉強にも支障をきたします。内なる声は社会生活にも影響を与えます。ストレスを抱えることでネガティブな発言が増えたり、愚痴を言うようになりますが、これを続けているとやがて仲間が離れ、孤独になってしまうのです。
チャッターは体にも悪影響を及ぼします。ストレスが頻繁に脅威システムを作動させると、細胞にメッセージが送られ、炎症遺伝子が発現します。これが長い間続くと免疫が衰え、病気や感染が生じやすくなります。
著者は、自分との対話を変えることで、チャッターから距離を取れるようになると言います。自分の心のネガティブな場所から一歩退き、より客観的な見方をする能力を身につけることで、心の平穏が保てるようになります。
困難な状況を切り抜けたいときは、自分の名前や二人称の「あなた(You)」を使うことで、自分を客観視できます。その上で今の気持ちを日記に書くことで、自分とのよい対話が行えるようになります。自分を客観視することで、脳内の反芻に関わるネットワークの活性化が抑えられ、ストレスのある状況でもよい結果が出せるようになるのです。
「心のタイムトラベル」というメソッドも効果があります。自分の視野を広げるために、いまから1カ月後、1年後、あるいはもっと先に自分がどう感じるか考えてみるのです。過去の嫌な体験も現在から振り返ってみると、自分のためになっていることが多いものです。時間軸を変え、未来の自分の視点で今を捉えることで、嫌な出来事の痛みを軽減でき、それを乗り越えられるようになります。
嫌なことが起こり、チャッターが始まると私はこの心のタイムトラベルを使い、10年後の理想の自分の姿をイメージします。嫌な事を乗り越えたヒーローに自分を置き換えることで、トラブルに負けない自分を作れます。さまざまな困難が自分を強くすると考えることで、ネガティブな内なる声を減退できるようになったのです。
チャッターは儀式で軽減できる?
ある物や迷信的行為がチャッターを和らげてくれることがあります。宗教的な行為や自分流の儀式を行うことで、心が落ち着き、良いことが引き寄せられてきます。 儀式はまず、心を乱すものから注意を逸らせてくれます。儀式という課題を実行せよと作業記憶に要求するため、不安や後ろ向きな心の声が入り込む余地がほとんどなくなるのです。イチローがバッターボックスに入る前に「儀式」を行なっていたことも意味がある行為だったのです。
私たちの内なる会話は日々を過ごす物理的空間の影響を受けています。周囲の環境との関わり方を賢く選べば、内なる声をコントロールできるようになります。
ネガティブな声が聞こえ、自分がコントロールを失っていると感じたら、周囲の環境に秩序を与えることも効果があります。自分の部屋を片づけたり、脳の中のタスクをリストに書き出すなどして、周りの環境を整えるようにしましょう。
自然の中で過ごす時間は、チャッターとの闘いを支える脳の限られた注意資源の補給に役立ちます。チャッターを感じたら、大自然に触れることで、気持ちを鎮められます。近所の並木道や公園に散歩に出かけることでもそれを代替できます。コンサートや美術館に出かけること、子供やペットとの時間を増やすことなども内なる声のコントロールに役立ちます。
チャッターに見舞われたときには、それと距離をおき、自分を客観視することが大切です。一方、喜びに関しては逆に、人生の愛おしい瞬間に没入するほうが幸福感を高めてくれます。楽しいことを体験しているときには、しっかりとそれに没入すべきです。
私たちが耳を傾けなければならないのは、やかましいチャッターではなく、自分を成長させようとするポジティブな内なる声なのです。自分自身との会話を正しいものに変えることで、私たちはよりよい人生を送れるのです。本書にはそのためのヒントが満載です。