科学がつきとめた「運のいい人」 著者 中野信子(なかの・のぶこ) 科学者、医学博士、認知科学者。東日本国際大学教授。1975年生まれ。東京大学工学部応用化学科卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。08年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。脳科学、認知科学の最先端の研究業績を一般向けにわかりやすく紹介することで定評がある。コメンテーターとしてテレビ番組に出演する傍ら、ベストセラーも多数。 「運のいい人」とは、どんな人でしょうか?経済的に豊かな人、好きなことを仕事にしている人、健康で長生きしている人、愛する人とともに幸せに暮らしている人、自由に生きている人……。 著者いわく、「運のいい人」には、考え方や行動の共通点があるそうです。本書では、その共通点について、気鋭の脳科学者である著者が科学的に分析し、脳科学の知見をもとに解き明かします。とは言っても、難しいことは一切ありません。脳と心の仕組みから、運をよくするために今日からすぐできる簡単な行動・思考・習慣まで、くわしくわかりやすく、そして楽しく解説します。 お金も時間もかからず、誰でも今すぐ始められる方法ばかり。あなたもこれで、「運のいい人」になりましょう。 運がいい人になる方法 どんな考え方や行動のパターンを持っていれば運が良くなるのでしょうか? それでは、3つ紹介していきます。 まず1つ目は、自分自身を大事にすること。なぜなら、自分を大事にしている人は、周りからも大事にしてもらえるから。一見そんな風には思えないかもしれませんが、人は良い人間関係から良いチャンスが生まれたり、他人と協力したり競争したりする中で、大きな成果をあげることができる社会的な生き物。運の良し悪しは、自分を大事にして他人と良い人間関係を築けているかが大きく関わっています。 また、良い人間関係を持つことは、脳を活性化させます。具体的には、セロトニン、オキシトシン、ドーパミン、エンドルフィンといった脳内物質の分泌を促してくれます。 セロトニンは、別名幸せホルモン 軽い運動をする、咀嚼、日光浴、良い人間関係をもつことなどによって脳内で分泌されます。セロトニンには、やる気や活力が湧く、頭がスッキリして明瞭になる、メンタルを安定させる、ストレス解消などの効果があります。 オキシトシンは、別名愛情ホルモン これは、人や動物とのスキンシップによる慈しみの感情・愛情が引き金となって、脳内で分泌されます。オキシトシンによって、脳機能アップ、ストレス軽減、過度な食欲の抑制などの効果があります。 ドーパミンは、別名やる気ホルモン ドーパミンは、目標を達成するときやそれに向かって努力している時、ライバルと競い合う時などに分泌され、私たちにやる気・活力を与えてくれます。 エンドルフィンは、別名脳内麻薬 激しい運動や、心身のリラックス心身の快感を感じる時に分泌されます。具体的にはランナーズ・ハイの状態の時、好きな食べ物を食べている時、アロマやクラシック、入浴などによって心がリラックスする時などに、体が快感を得る時に脳内で分泌されています。エンドルフィンが出ると、私たちは多幸感、恍惚感を感じ、ストレスの解消、体の修復、脳機能向上などの効果を得ることができます。 以上の4つの脳内物質は、脳機能の向上やメンタルの安定などの様々な良い効果を私たちに与えてくれます。そして、この4つの脳内物質は良い人間関係によって、より多く分泌されます。これは人間が社会を形成することで命をつないできた、社会的な生き物だから備わった機能です。 他者との良い人間関係を持つことは、私たちにとって大きな意味を持ちます。幸運は人経由で降ってくることが多く、良い人間関係を持つことで、心身にいい影響があり、降ってきた幸運にいつでも気づいて掴みにいける状態を保たせてくれるのです。 【運のいい人、は頭がいい】 運のいい人はいまの自分を生かす運のいい人はいい加減に生きる運のいい人は積極的に運のいい人とかかわる運のいい人はあえてリスクのある道を選ぶ運のいい人はひとり勝ちしようとしない運のいい人はライバルの成長も祈る運のいい人は他人のよさを素直にほめる運のいい人は具体的な目的をもつ運のいい人はゲームをおりない運のいい人は自分の脳を「運のいい脳」に変える 目次 第1章 運のいい人は世界の中心に自分をすえる第2章 運のいい人は「自分は運がいい」と決め込む第3章 運のいい人は他人と「共に生きること」をめざす第4章 運のいい人は目標や夢を「自分なりのしあわせのものさし」で決める第5章 運のいい人は祈る 著者の中野先生は、運は私たちに公平に降ってくるもので、いいか悪いかは目の前の幸運をつかめるかつかめないかの差だと言います。つまり、運とは全くコントロールできないものではなく、私たちが主体的に関わって変えられるものであるということです。では幸運をつかめために、必要なこととは何でしょうか? それは、 などが関係してきます。このことから、運がいいのか悪いのかというのは、その人の考え方や行動のパターンによって作り出されるものであると言えるのです。そんな運について、本書では「最大限味方につけるにはどうすればよいか?」という観点でアプローチをしています。 運が良くなる方法の2つ目は、自分は運がいいと決め込むこと。自分は運がいいと思っている人と悪いと思っている人では、困難に対するとらえ方や対処法が変わってきます。 例えば、自分は運が悪いと思っている人は、困難や失敗に対して自分は運が悪いからうまくいかないと、失敗を運のせいにしてしまう部分がどうしても出てきます。対して、自分は運がいいと思っている人は、失敗や困難に対して自分は運がいいのにうまくいっていないことは、やり方が悪い、努力が足りないといったところに原因があると考えます。 つまり、自分は運がいいと思っている人の方が、努力によって改善の余地があるということです。困難への対処法の違いが長い年月をかけて積み重なれば、大きな結果の違いが出てくるでしょう。 […]